縦長シリーズ

幻の湯治場

外国での治療

日記のようなもの

手術について一考

 

外国での治療について

 

新しい治療が日本より先に許可される、ということで、

「外国の医療は進んでいる、外国で治療できないか、いやそうしたい」、と思われる方もあるだろう。

外国に行ったら、その進んだ治療を受けられるのではないか、と思われることだろう。

外国に住んでる人が、うわらやましいわ、と思われる方もあるだろう。

私ぃ、お金あるからぁ、じゃあ、移住しちゃお、とちらりと思われる方もあるだろう。

でも、私は難しいと思う。

お勧めしない。

 

じゃ何故私は外国で治療をしているのかというと、住み着いてから関節リウマチが発覚したためだ。それだけの理由である。犯行じゃないってば

 

外国での治療で前向きな例外があるとしたら、それは命に関わるような手術。「日本では技術的にやれないからどうしても」外国で、という場合だ。

これは手術前後の数ヶ月という一時的なことでもあるから、不可能ではないだろう。(実際には、その後の経過を見るには、同じ医師による診察のほうがいいのではないかと思うので、慎重な準備が必要だが)重大な病気なのに、日本で許可されていない、できない手術だったりしたら、ほかに選択はない。渡航そのものの疲れのため、残念な結果に終わることもあるようだが(こんなケースがわずかであることを祈っている)、成功例もある。

 

治療以前の問題として、最初にフランスの場合に限っておおざっぱに書かせて頂くと(他の国のことはわかりません。)、まずは長期滞在許可が必要だ。「ずっと住めるかどうか」という問題である。関節リウマチの治療は長期治療どころか、終身治療だから、中途半端に3ヶ月来ても仕方ない。3ヶ月ごとに帰国していたら、からだも持たない。また、許可なしで住んだらフランスの国民社会健康保険は加入できない。つまりは、どこの地に骨を埋めても良い覚悟がないなら、できない。

というわけで、政治レベルの問題がまずひとつ。それがクリアできる、という場合・・・

 

外国での関節リウマチの治療に何が問題となるか。

 

いちに、言葉である。言葉コトバ〜コトバ〜コトバ〜ガイコクゴオ〜

2に、生活習慣である。この国に、サービスというものはない〜少しは働け〜気をまわせ〜

3に、保険と生活である。カネ〜モネ〜マネ〜

 

 

パリでは日本語だけで生活しようと思えば、ある程度それは可能である。買い物、日本人だけとのつきあいなど。が、まったく仏語を話さずに過ごそうと思ったら、常に通訳さんと出歩くことになる。リウマチ医だってフランス人だ。予約も3ヶ月待ちだったりして、「日本では考えられない」状況の連続である。そして、メンタリティのちがいは、想像以上、言葉の壁以上である。これを受け入れられず、精神的に乱れるケースもあるという。

言葉の点では、少しできる人、英語ができるから大丈夫、という人には、2の生活習慣に注目して欲しい。パリ在住の日本人精神科医は、日本は、世界の中でも特殊な文化が発達している、という。例えば、「他人やまわりのことを考えて」行動するように私たちはしつけられている。(今は皆がそうでもないようですが)「言われなくてもわからなければならない」「気をまわす」のが、当たり前である。フランスに限って言えば、この辺は日本と正反対で、「言わないとわからない」のが当然である。「まわす気」など存在せず、何か意思を伝えようと思ったら、1から10まできちんと話さなければならない、というわけ。しかも、その上で話が通じないこともある。(コトバは通じても・・・)

 

早い話、外国生活はリウマチに悪い、と思う。通じない言葉、なれないところでの暮らし。すごいストレスになること請け合い。つまり、関節リウマチが悪化する可能性のほうが高い。こんなわけで、私は全然お勧めしない。

 

やむを得ず外国生活を送っておられる方にはごめんなさい。

 

また、新薬への望みに、こんなことを言ってみたい。外国で許可された薬は、おそらく日本ではまだ治験中だ。ということは、日本人の体がどう反応するか、外国でも日本でも、まだわかっていない、ということだ。或いは、日本では、ためらっているとうことかもしれない。新薬を使っている身だが、実の所、「これって治験の延長みたいなものじゃないか。フランスのアジア人でこの薬を使っている人間はわずかだろうし」と思わずにはいられない。センセーそのつもりなんじゃないの?と、影では思っているのである。余り手放しで喜べないのだ。

 

もっとも、日本では、あまりにも新薬の許可が先延ばしになるので、じれったくなるのは当然だ。外国から(=アメリカから、だが)入る新薬の使用がなぜこんなに遅れるのか?製薬会社の競り合いだろうか。政治家のお知り合い次第なのだろうか。それに、日本で開発される新薬がなかなか出回らない。これは全く、政府レベルの話だ。

 

まあ・・・何といっても、かんたんにオフ会ができる場所が、一番!私なんか、こうして日本語のリウマチサイトを発見して、大喜びしているのだから。

私の場合、治療に来たわけではなくて、フランス生活をしている間に病気になった。

「フランスへ来たことそのものがストレスで、そのせいでリウマチになったんじゃないの?」と言われたら、

「はい、きっとそのとおりです」とうなずくしかない。本当の所は、誰にもわからないけれどね。

 

フランスには、公的な社会健康保険と関係なく営業しているらしい私立病院もあり、そこでは、えらく高い診察費を払えば、日本人医師にも会えたりする。しかし、公的な最低料金より、もうとにかくはるかに高い診察料は、どこからも払い戻しされない。旅行者保険では可能かもしれないが、こういう保険では、以前からの持病は、払い戻しされない可能性が高いと思われる。また、旅行保険は長期契約が可能だが、更新は、フランスからはできないし(学生は日本にいる親頼み)、あまり何年も続けて入っていると、そのうち断られると言う。

 

なお、フランスの社会健康保険は、仕事をした人がパーセンテージで社会保険に積み立て出費している。逆に言うと、一定期間、一定の条件で仕事をしないと、その恩恵を受けられないのである。ここで言う「仕事」とは「税金の対象になる、申告されている正式な仕事」のことで、闇仕事ではない。

「申告されている正式な仕事」では、雇用側は、ひとりにつき、本人へ渡す給料と同じくらいを税金として納めるのだという。日本では、アルバイトは、ほいほいとできるが、フランスでは、週に数時間のバイトでさえも、正式であれば、きちんと給料明細が出る。だから、「雇うこと」そのものにお金がかかるので、簡単に人が雇えず、失業が解消し難いのである。

留学で来ている日本人学生も、こちらの社会保険に入れないので、上記のように日本からの旅行者保険が必要になる。

では仕事を探そう、と思ったら・・・・・失業率の高いこの国、大変。ストレスストレス。それで関節リウマチが出たフランス人だっているだろう。

 

私はフランスのことしか知らない。でも、どこの国へ行くにしろ、母国語ではない言葉を使って生活するには、慣れの時間も必要で、たいへんなことだと思う。もう同じ苦労はしたくない。

 

ばくぜんとフランスっていいなあ〜っと思っている方、こんな本を読んでみて下さい。日本との文化比較もおもしろいです。

パリ症候群(太田博之著)

こわいですよ〜でも、おもしろいですよ〜パリは、犬のうんちできたないですよ〜

 

最後に、ちらっときいたアメリカでの様子、新しいリウマチ薬は、テレビでコマーシャルが流れるんだって!商業主義ですな。金があれば治療できるってわけですか。知り合いのアメリカ在住のフランス人が、フランスへ一時帰国する際、「この、ガンの薬をフランスで買ってきて」と頼まれたという。また、カナダとの国境近くでは、アメリカ内よりも安く買える薬を買いに行こうバスツアーがある。(ほんとうの話)

このクニは、本当に金がなければガンでも見殺しにされるようである。日本がそうでないことを、祈りたいが・・・・・楽観はできないようだ。

 

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